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東京高等裁判所 平成4年(ラ)220号 決定 1992年6月10日

抗告人 山田成

<ほか二名>

右抗告人ら三名代理人弁護士 佐々木正義

主文

一  本件抗告を棄却する。

二  抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙「執行抗告状」記載のとおりである。

二  保全執行は、民事保全法四三条二項所定の二週間の期間内に執行を完了する必要はないが、この期間内に執行の着手と認められるべき行為があることを要するものと解される。そして、執行機関が当該執行の目的のための強制的行動を開始した時点で執行の着手があったものと解すべきである。

本件記録によれば、執行官は、平成四年一月二四日、執行の対象である建物に臨み、施錠されていたので技術者に解錠させて建物内に立ち入ったところ、三階部分には布団三、四枚、土鍋五こが、四階部分には机三こなどが存在したが、いずれも債務者の占有物であるという認定はできず、また、三、四階の扉に「株式会社乙山」の表示があり、四階に右会社宛の電気、ガスの料金請求書が存在したので、債務者と右会社の占有に関する事実関係が不明であるとして、債権者においてこれらの点を調査するため執行を一応中止したことが認められる。

右事実によれば、執行官は、執行対象である建物の占有状況を調査したにとどまるのであるから、執行の目的である占有移転禁止・執行官保管の仮処分のための強制的行動を開始したということはできない。

したがって、抗告人らの異議申立を却下した原決定は相当である。

三  よって、本件抗告を棄却することとし、抗告費用の負担について民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 髙橋欣一 裁判官 矢崎秀一 及川憲夫)

<以下省略>

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